6人が本棚に入れています
本棚に追加
冷静に発せられる彼の声。
彼の後ろでは月が、青く光っていた。
「どこに…?」
そして、まだ寝ぼけている私。
彼は呆れたように、顔を歪ませながら、私に言った。
「……はぁ?家に決まってんだろ」
「あ…そっか…」
そこでやっと、私は理解した。
…けれど、私はベンチから立ち上がらなかった。
「……帰んないの?」
彼はとても不思議そうに、首を傾げながら聞いてきた。
私は彼を見上げ、小さい声で
「……もうちょっと、ここにいます」
と答えた。
なんだか、もう少しここにいたい。
ぼーっとしたい。
…帰りたくない。
そう、思った。
「親、いいの?」
私を見下げながら問い掛ける彼から、私は目線を外し
「…はい」
と呟いた。
…どうせ帰っても、きっと両親はいないだろうし。
家具達が、待っているだけだろう。
最初のコメントを投稿しよう!