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「…帰んなくていいの?」
こんな夜中まで家に帰んなかったら、親も心配してることだろう。
彼女を見下ろしながら俺は尋ねた。
「どこに…?」
すると彼女は首を傾げた。
…なんだよ、こいつ。
「……はぁ?家に決まってんだろ」
「あ…そっか…」
俺が呆れて答えると、彼女は前を見て小さく言い、やっとわかったような顔をした。
しかし、わかった顔をしているのに、女の子は帰ろうとしない。
彼女の髪が、今度は風で綺麗になびく。
…疑問に思った俺は、思ったまま聞いてみた。
「……帰んないの?」
すると女の子は、少し寂しげな空っぽのような表情をちらつかせながら
「……もうちょっと、ここにいます」
と、力無く言った。
そんな彼女の表情に、思考が吸い込まれそうになりながら、俺は思った。
…親はいいのだろうか。
絶対心配してるだろう。
その考えが頭にのぼった。
「親、いいの?」
「…はい」
木々がざわざわと揺れる。
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