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誰かなんていってはいるが声の正体などこの生徒会に入る前から知っている。
というのも俺が中学二年の時一緒に生徒会を盛り上げた仲とはいうものの、ほとんど言葉なんかは交わしていないんだけどな。
ニコニコとしながら、深窓の令嬢のような可憐な笑顔で此方を見やる彼女はとても人外離れをしている。といっても良い意味でなんだけどね。
美しい黒髪をサイドポニーにしているのも俺の好みど真ん中。
整った顔立ちに完璧なスタイル。そして上品な仕草、この人を見る度に思ってしまう、この人が俺と同じ、人なんだろうかと。
口に手の甲を当てながらまるで貴婦人の如き仕草でクスクスと笑いを漏らす姿を見るとますます、一般人の自分との格差感じ、少し気落ちしてしまう。
「そうですね、ちょっと肩が凝ってしまっただけですよ。…でも、ありがとうございます。元会長様?」
「フフフ♪そうですか?それに元会長はやめてください。今は一書記に過ぎないんですから♪」
その時の彼女の役職は生徒会長であり、それに彼女が今は一書記でしかないなんていってはいるが実質、我が私立新風館高等学校、その生徒会を取り仕切っているのは間違いないだろう。
この陽気でどこか森の中を歩いている時の小鳥の囀りのような声とは裏腹にもう俺なんかじゃ手も足もでないくらいの策略と知謀でこの生徒会ならず、一般生徒も影から牛耳っているなんて誰が思おうか?
そこはかとなく、少しの尊敬と少しの畏怖を感じるのも当たり前なんだろう。
「でもびっくりしましたよ、またこの高校で再会できるなんて…思ってもいませんでした」
自分の気持ちをそのまま言葉に変えてみる。人間的に素直ではない俺にしたら結構珍しい言葉だ。
まず俺は物申す時波風が立たないように当たり障りのない言葉を発するからな。
「クスクス♪…そうですね…。こんなに立派になっていただなんて先輩としては嬉しい限りです♪」
「いやいやいやいや…先輩、最初に会った時まったくこれっぽっちも俺の事を覚えてませんでしたよね!?どの口がいうんですか、どの口が…」
「えー?この口ですかねー?」
俺の言葉に反応を示すかのように、唇を突き出す。
そのぷるぷるとした瑞々しい果実を口に閉じ込めてしまいたいなんて思ってもしまうのも無理はないだろう。
禁断の果実ほど、人間にとって魅力的なのは変わりないんだろうから。
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