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あたしの好きなもの
爽やかな風
甘酸っぱい苺
甘えん坊な猫
最近読み始めたファッション誌
それと…
『おはよー』
呼ばれて振り向く
『おはよ♪』
親友だとあたしは思っている。
クラスメイトの倉科美空(くらしなみく)ちゃんが小走りで駆け寄ってきた。
相変わらずちっちゃくて可愛い。
『今日はちょっと涼しいねぇ』
今は6月。
幸い今日は晴れているが、厄介な梅雨の季節だ。
この時期の必需品
折りたたみ傘、フェイスタオル、替えの靴下、消臭スプレー
あたしには化粧っ気がないからわからないけど、化粧する子達は汗や雨で頻繁にトイレに行っている。
『今日はチエの王子様まだ来てないの?』
『ッバカ!』
思わず慌ててしまったけど誰が聞いてるわけでもないので問題はない。
むしろ聞かれていたところで、ショックを受ける輩もいない。
『美空はチエも化粧したらもっと可愛くなるとおもうんだけどなぁ』
『はいはい』
化粧は苦手だ。
まるで別人になったみたいで、腰のあたりがくすぐったくなる。
でももっと苦手なのは…
恋愛だ。
生まれて15年、人様のような恋愛というものをしたことがない。
それというのも私が小学生の時、学校から帰ると、仕事に行ってるはずの父が家にいた。
裸の女性と。
私は嫌悪感にかられ、押し入れに逃げて泣いていた。
結局、父の浮気は数日後母にバレ、二人は離婚した。
私は母に引き取られ育てられた。
そんな父の姿を見て以来、半分男性恐怖症になってしまったのだ。
そんな私が初めて人に好意を抱いた。
多分これが初恋…
ドキドキするせつない感じ、今まで感じたことのない感覚…
私は一つ上の先輩『相馬和哉』(そうまかずや)に恋をしていた。
先輩は二年で生徒会長をしている。
優しく頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗…
いわゆる高嶺の花的存在で、狙っている人は数知れず…
そんな私もその一人。
『あ、会長さん来たよ~』
美空の声に振り向くと、すでに何人かに囲まれて人の視線を集めていた。
男女ともに人気のある生徒会長…
そんな彼との出会いは、入学式の日だった…
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