赤の懺悔

接触

何の用だろう？

…卒業して10年弱経とうとしている今、大して仲が良かったわけでもない福島が、加代子に電話をかけてくる理由といえば大体決まってくる。

「勧誘かー。」

久しぶりの友人から電話が掛かってきて、懐かしくて話を聞いてみれば、マルチ商法の勧誘だった。

なんてことはよく聞く話だ。

実は加代子も、大学の時同級生に、とてもいいシャンプーだ、買ってもいいし、このシャンプーを友達に紹介してくれたら売上の5％をキャッシュバックする、なんて怪しげな勧誘を受けたことがあった。

東京って怖い所だなーと思った記憶がある。

幸い加代子は、のどかな所で生まれ育った割には…いや、逆に、かもしれないが、上京する時、両親に口が酸っぱくなるまで言われ続けた。

「世の中甘い話はない。東京は怖い所だ。簡単に判を押すんじゃないぞ。」

加代子自身も、あまりのんびりとはしていない。
どこか冷めた目で見ている。

勧誘を受けた時も、熱心にシャンプーの話を聞くふりをして、自分の中の第三者が『これはマルチ商法だ』と語りかける。

自分は、そういう類いのものに引っ掛かりにくい、と自負している。