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そんな具合で、週半ばの出来事だったので、週末再び福島から電話がかかってくるまで、電話がかかってきたことすら忘れていた。
『もしもし、福島です。森尾さんのお電話でよろしいでしょうか。』
はい、よろしいです。
と思わず正座しそうになる。
『ごめんなさい、いきなりの電話で驚いたでしょう。水曜に留守電に入れておいたんだけど…お仕事だったよね。ごめんなさい。』
いえ、こちらこそ…と訳のわからない返答をしてしまう。
福島の応対があまりにも事務的で丁寧なので、調子が狂う。
しかも、留守電に気付いていたのに無視をしていた後ろめたさがあった。
『久しぶりに会って話さない?今〇〇にいるの。遠い?予定がある?』
〇〇は、加代子のアパートから2駅離れた所だった。
別に遠くもないし、友達も彼氏もいない加代子に予定があるはずもなかった。
しかし「行く行く、暇だし。」とは何となく言いづらかった。
それを見透かすかのように、福島は続けた。
『あたしも久しぶりに仕事が午前中で終わってさ。職場の近くにお気に入りのパスタ屋さんがあるんだけど、週末1人で入る勇気、ないんだよね。もし出てこれるなら付き合って。』
パスタと聞いて、お腹がぐぅと鳴った。
コンビニばかりで、週末も出歩かないから、外食は久しぶりだった。
まぁ、いいか。
勧誘でも。
別に、誘いに乗らなければいいんだから。
暇潰しに、加代子は福島に付き合うことにした。
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