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暗い玄関で、それほど高くないハイヒールを脱ぎ捨て、壁に当たりながら部屋に入る。
ワンルームの隅で、ファックスつきの電話がチカチカと光っていた。
珍しいな…。
滅多に鳴らない電話。
番号も、高知に住む家族くらいしか知らない。
しかも大体携帯にかけてくる。
母が携帯を持たない人で、大学入学時に無理矢理買われた。
要らないと言うのに「加入権はあった方がいい」という時代錯誤の論理で強行された。
就職したら解約しようと思っていたが、引っ越しをすることもなく、面倒臭かったこともあり、しかも仕事でたまにファックスが必要だったので放置だった。
ということで、本当に置いているだけで、積極的に使うわけでもなく、ほぼ用を為さない機械に成り下がっていた。
チカチカと点滅するのは留守番電話だ。
どうせ母か、つまらない勧誘電話だろう。
加代子は再生ボタンを押して、たいして距離もないキッチンに立ち、湯を沸かそうとした。
「ピー」と発信音が鳴り、留守番電話が再生された。
『もしもし。高校の時同じクラスだった福島です。
卒業アルバムにあった番号から電話をしました。
今、東京にいらっしゃると人づてに聞きました。
もしよかったら電話ください。
番号は090******…』
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