出会い頭、出会いかしら

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 …………。  え? 笑い声?  その声は、土手の下の方から聞こえてきた。  反射的に視線をやると、まず頭が現れた。  順に顔、上半身、下半身と見えていき、最後に靴が見え、声の主の正体が判明した。  制服姿の、女の人だった。  確かこの制服、僕がこれから行く博章高校のだ。  髪は艶を帯びた黒のストレート。前髪は綺麗に切り揃えられており、後ろ髪は腰位まで伸びている。  逆光だったのにもかかわらず、目はキリッと凛々しいがその瞳は澄んでいて、鼻もやや高くなかなかの美人さんだという事が分かった。  そして、やや口角が上がり微笑んでいる様に見えたその口が、ゆっくりと開いた。 「大丈夫?」  優しく声を掛けられた僕は勿論、 「……ぁ、ハイ……」  蚊が鳴く方がマシな声で返事をした。
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