出会い頭、出会いかしら

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 すると彼女はOLが床に落とした書類を拾うが如く、優雅な姿勢で地面に散乱した筆箱やノートを拾い始めた。  慌てて僕も参加し、鞄の中に適当に詰め込んでいく。 「あら……」  そんな中、ある本を手に取った彼女の動きが止まった。 「!」  僕は慌ててその本を彼女から取り上げ、両手で抱く様にして隠した。  み、見られた……。しかも『あら』って。 「フフッ。私も好きよ。その“漫画”」 「……!」  その言葉に思わず彼女の方をチラ見する。 「可笑しいもんね。読む度に笑っちゃうわ」  ……意外だ。こんな清楚で綺麗な人が、こんなコアでハードなギャグ漫画を読むなんて。  拾い集めた物をまとめて僕に手渡すと、彼女は土手の向こうに流れる川に体を向けた。 「やっぱり、笑う事ってステキよね……ううん--」  そして、その川の上に浮かぶ朝日に向かって叫んだ。 「--笑わせる事って、ステキっ!」
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