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釈放されて1週間後のことだった。
「片井さんに是非とも依頼したく、やって参りました」
沈んだ声で言った、今回の依頼人は、藤脇株式会社の社長令嬢、藤脇雅子だ。
藤脇株式会社は日本有数の大会社で、よくわからんがとにかくやばいくらい金があるっぽい。
雅子嬢は大きな瞳に真珠の涙を浮かべながら続けた。
「私が大切に飼っているペットのパンちゃんが何者かに誘拐されてしまったのです。パンちゃんを助けてください」
雅子嬢は今にも応接机に突っ伏して泣き崩れてしまいそうだった。
俺は彼女にハンカチーフを差し出した。
「涙をおふきなさい。今はハンカチーフで拭うことでしかあなたの涙を止められませんが、依頼を完遂したその時には、貴女の泣き顔は笑顔に変わっていることでしょう」
雅子嬢はきょとんとした顔で俺を見ていた。
駄目だよ、雅子嬢。俺と君では身分が違いすぎる。俺は君の心の側にいれるだけでいいのさ…。
そう思っていると雅子嬢はなんかめっちゃ微妙な笑顔を浮かべながら、
「え、えぇそうですか。ではとにかく依頼の話なんですけど…」
と一気に話を進めた。
雅子嬢の心情は計りしれないが、今日の俺はハードボイルド満点だった。
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