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…俺の思い出は、これで終了。
――さぁ、いくか。
俺は、静かに一歩を踏み出した。
ゴォォォォォォという音を立て、空を切る。
――アイツは幸せだったのかな。
――俺たちに虐められて、それでも良い人生だったのかな。
風を切る音が耳を包む。
下から悲鳴が聞こえるが、ほとんど風を切る音にかき消される。
――アイツとは、思い出って呼べる思い出が全然ないけど。
――それでもアイツ、幸せだったのかな。
体全体に、冷気が当たる。顔に当たる冷気がとても痛いが、それすら気にしない。
――アイツ、俺に虐められてたのに…。
――幸せ、だったのかな。
もうすぐ、到着だ。
残り2m近くになった時、周りの景色が全てスローモーションとなった。
――これが、走馬灯か。
――もう考えても仕方ない。
――失った時は、もう戻せないんだから。
――でも、もし戻れたら…。
――拓真と、友達に、なりたい。
終わった…。
俺は静かに、目を閉じた。
『ぐしゃっ』
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