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複雑な担任事情
「いや~、やっぱ映画は大迫力の洋画に限るよなぁ」
と、満足感たっぷりに語る男は人生、暇ではない。なにしろ高校の教師をしているからだ。
しかし、これは暇潰しではない。この、教師らしくないだらけた男、高仲昇平にとってはこれも立派な仕事のうちなのだ。
むしろこっちが本職といっても過言ではない。
休日になる度、このスーパーに来ているのだ。
「これがなくちゃ生きる気力がなくなっちゃうよな」
このスーパーは多様化の先端を走っている。
客の全てが高仲のように映画を観に来ているわけではない。
ここはスーパーなわけでもちろん、買い物をする客が賑わっている。
多様化というだけあって、サービスを主とした客も多い。
ここ、ビッグマートは生活するには事欠かないだろう。というより人生規模で事欠かないだろう。
「さて、買い物でもして帰るとしますか」
高仲はビッグマートをフル活用できる数少ない教師だ。
もう他の店のことなんか頭にはない。
高仲の世界はビッグマートと自宅と学校で構成されているようなものだ。
「はあ、オレももう一クラス持つようになったのか」
落胆したような言い様だが、自身の目標が成就したことに口元を緩めている。
生徒たちをしっかり指導するという抱負を抱き、これから始まる学校に向けて思考を切り替える。
「さてと、いっちょ頑張りますか」
そういって一階の食料品売場に向かった。
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