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学園長室の第一印象は、想像とほぼ同じ、というのがリアンの脳内に浮かんだ。
続いて、ギルドの司令室とは大違い、だった。
広さは同じ程度だが、壁の本棚や机の上は綺麗に整理整頓されており、花瓶や絵画も飾られている。
──ナイルも見習えよ、本気で。
部屋を視線だけで見渡した後に、思わずギルドにいる彼に向けて呆れてみせる。
一方、学園長である女性は転移してくるなり部屋にあるデスク越しの椅子に座り、リアンへ向かいにある豪華なソファーに座るよう促した。
リアンが座るのを確認すると、彼女は意気揚々と口を開く。
「ようこそ、サラニア学園へ!改めまして私は学園長の【アイリ・ヴァイオス】と申します。で、あの……出来れば私のことはアイリと呼び捨てで呼んでください!」
淀みない口調で歓迎の言葉と自己紹介をした学園長──アイリは、最後だけ恥ずかしそうに顔を赤くした。
「……?いやでも学園長を呼び捨てなんて」
「大丈夫です!私がそうして欲しいんです!……迷惑だったら学園長でも良いですけど」
「……分かりました、アイリ」
理解出来なかったリアンは首を傾げたが、彼女がそこまで望むのならばと了承した。相変わらず鈍感だが、アイリは心で喜びに満ち溢れている。
「俺は【リアン・ヴァルティ】と申します。これからよろしくお願いします」
今度はリアンが自己紹介を済ませた後、彼はふと眉を軽く寄せる。
「……ところで″ヴァイオス″って……」
「え?あぁ。ギルド最高責任者【ナイル・ヴァイオス】は私の兄です」
リアンが完全に言い切る前に意図を感じとり、アイリが少し誇らしげに答える。
「アイリが……成る程、ありがとうございます」
「いえいえ。既に貴方の正体も聞き及んでます。《全無の覇帝》様ですよね!憧れなんですよ!あんなに強いですし!」
「…………」
敬愛と羨望のこもった熱烈な言葉だったが、当の本人は僅かに顔を哀しそうに歪める。
その様子に気付いた……気付いてしまったアイリは慌てた。
「何か気に障るようなことを……」
リアンはそれに首を横に軽く振る。
「何でもありません。正体は隠してもらえると助かります」
「……勿論です」
自分の発言が気に止めたのかと思い不安になるが、リアンの表情は既に戻っていたので気にしないことにした。
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