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【 淕 Side 】
俺の前に立っているのは、何が何だか分からない。といった表情をした光紀。
(ごめんな…光紀)
これで良かったんだ…俺自身の為にも、光紀の為にも。
そう、自分に言い聞かせるかのように何度も何度も心の中で呟いた。
「光紀。俺は柳時学園に行くから」
俺は、軽い放心状態に近い光紀にそう告げる。
「…りゅう、とき…」
「ああ」
「ほんとに…?淕、そこに行くのか?」
「え?あ、ああ…」
「…俺も……」
光紀がボソッと何かを言っているように聞こえたが、上手く聞き取れない。
「光紀?」
「俺も、そこに行く!!」
「そう……って、え!?」
「そう簡単に幼なじみの俺から離れられると思うなよー!」
いつもの光紀らしい台詞を叫びながら、卒業式が行われる体育館の方へと走り去って行ったのだ。
その様子を呆気に取られた俺はただただ見つめていた。
「…ははっ。やっぱり光紀には敵わないな…」
頭を支えながら、ため息混じりに溢す。
知ってるか?
いや、知らないか
光紀。
俺が何故違う世界を選んだか気づいてないよな…
これじゃ、全く意味がない
いつか
ちゃんと…伝えるから。
光紀。
俺は――――……
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