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極々平和そうな住宅街には、到底不釣り合いな乗り物。
黒いリムジンはこちらに向かってきては二人の前、淕の家の前に停められた。
ドアがガチャリと開く音が聞こえ、中から長身で同じ男から見ても羨ましく見えてしまう、男性が一人出てきた。
「お待たせ致しました。…そちらのお二人が永石淕様と池橋光紀様…で宜しいですか?」
「あ、はい」
少し緊張した面持ちで淕が返事をする。
「お迎えにあがりました、車にどうぞ」
その言葉と同時、リムジンの扉がゆっくりと開かれた、触れていないのに。
あれ?と気になって光紀が扉を見つめながら首を捻っていると、先程挨拶したばかりの運転手らしい男性がクスッと笑う声が聞こえてきたのだ。
それに気が付き光紀はその男性を見つめる。
「…失礼致しました」
光紀の視線にハッとしたのか、男性が謝ってきた。
「あっ、いや…」
「可愛らしくて楽しい方ですね。池橋様は」
「可愛くはないと思うけど…そうっすか?」
男として可愛いと言われるのは複雑な気持ちだが、相手も悪気は無さそうなので一応褒め言葉として受け取ることに。
最初は二人とも緊張していたが彼が緊張を解くかの様に、何度か話し掛けていく内に次第に二人とも溶け込んだ。
学園までの道のりはまだはっきりとは分からない。
だけど、光紀と淕は丁度いいかもしれない…と密かに思ったのだった。
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