予感

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【 淕 Side 】 話が弾んで話題が尽きることはなかった。 ふと、車窓から見える景色に視線を移す。 あれから車に揺られてどのぐらい経ったのだろう。 気づけば目に映る景色にはどれも見たことがない建物や、世界が並んでいた。 途中、車が走る振動に心地よさを感じて眠気も感じた。 「…ふっ…あ」 「光紀?」 「あ。ごめん」 「まだ時間あるらしいから寝たらどうだ?」 「ん…でも……」 「ほら!後で起こすから」 母親が中々寝つ付けない自分の子どもを寝かしつけるように、光紀を横にさせる淕。 始めは微かな遠慮と抵抗を見せていた光紀だったが、人間極度の無理は良くない。と何故か言い聞かされ、渋る中眠りの体制に入ったのだ。 「じゃあ、おやすみ…」 そう言うと頭上からは、ああ。と返事が返ってきた。 …数分後、すやすやと気持ちよさそうに光紀は寝息を立て始めた。 淕は愛しい人物を見つめるかの様な、だけど少し寂しそうにしている風にも見える。 昔からの幼なじみでずっと一緒に過ごしてきた、誰よりも大切な友人だから…幸せになって欲しい。 そう心の中ではいつだって願い続けてきた。 光紀に対する自分の本当の気持ちに気づいたのは中学校二年生の時。言ってしまえるのなら、どんなに気が楽になるか…その反面、今の関係が壊れてしまうことが怖いのだ。 そんな身勝手な理由。 言い換えればただのエゴイズム。 言える勇気があったなら、とっくの昔に伝えていただろう。言って、それがどんな結果だったとしてもきちんと、真っ正面から受け止める。 (―――…だから) 言わずに後悔するのは一番歯痒い。もしくはいつか、きっと後悔することに違いない。
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