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今日、俺の好きな人が結婚する
と言っても、それは花嫁の麻美ちゃんじゃなくて…
彼は白いタキシードを身に纏い心から愛おしそうな表情をして、友人たちと嬉しそうに話し込む花嫁を見つめていた
挙式前の僅かに取れた時間、控え室前まで押しかけた親類や友人たちに挨拶して回る2人を少し離れた窓際でぼんやりと見ていると
そいつは何かを探すように辺りを見回し、その目線が俺を見つけて、止まった
彼は花嫁に一言二言話しかけた後、1人こちらへと歩み寄ってくる
目前に立ち止まり、とろけそうな微笑みを浮かべて
「和也、今日は来てくれてありがとうな」
俺の心の“ホント”には全く気づかずに、幸せいっぱいなオーラ全開で振り返って花嫁の麻美ちゃんに笑いかけている
麻美ちゃんもこっちを見て笑顔で手を振っていた
それに応えるように手を挙げ、目の前の親友…明彦に視線を移して言葉を贈る
「…おめでとう、麻美ちゃんを幸せにしてやれよ」
今日の俺は、ちゃんと笑えているのかな…?
作り笑いを覚えたのは何年前の事だろう
親友に対する背徳的な想いに気づいてしまってからだから、もう5年近くになるはずだ
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