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未だにクスクスと笑いながら、忘れるなんて酷くねぇ?と懐かしそうに俺を見ている
「あ、ごめんなさい
あまりに久しぶりで直ぐにわからなくて…」
顔を覚えてないなんて失礼な話だけど、学生の頃明彦の家に遊びに行った時でさえ挨拶程度でほとんど話した事もなく接点がなかったんだから仕方ないと思う
大学を卒業してすぐ明彦は実家を離れアパートを借り、それからは明彦の実家へ訪ねる事はなかったから余計に…
気まずい気分を誤魔化すようにまた酒を煽っている俺に
「懐かしいよなぁ
お前卒業してから全然来ねえんだもん
って言っても、俺も去年から家を離れてるけど
それにしても…ちょっと痩せたか?」
俺の腕から背中にかけて確かめるように、掌で無遠慮に触りまくる
確かにあの頃よりも少しは痩せたかもしれない
誰もがそうだろうけど、ストレスが溜まると食に影響が出る
他聞に漏れず自分も、だ
俺の場合は会社のストレスだけじゃなく、明彦に抱える想いが何よりのストレスになっていた
報われない想いや親友を演じて傍にいる罪悪感…
それなのに諦めきれない自分が本当に嫌になる
また自己嫌悪に陥っていると、腋から腰にかけて蠢く覚えのある感覚に意識が戻った
「ちょっ…、変なとこ触んないでくださいよっ」
それは仁さんの掌で、
「うん、やっぱあの時より痩せたよな…」
――…って仁さん、何でそんな昔の俺の体型覚えてんの?
しかも感触でわかるほどちゃんと見たことも触ったこともないのに
と、少し引いてしまう
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