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          突然の事に驚いてフリーズしているのを良いことに、唇を割り開いて舌を滑り込ませる 昼間、この唇に触れていたのは彼の妻になった人間… もちろんそれ以前からキスも、それ以上の事だってしてきているんだろうけど、目の前で見せつけられた痛みは彼には一生わからないだろう 式の時に、テレビの懐メロ特集で耳にした事がある、二人か三人組の女性歌手が歌っていた曲を思い出していた 好きな男が別の女性と結婚式を挙げ、自分は参列者と並んでバージンロードを歩く二人を見送っている歌で、その中に “くたばっちまえ、アーメン” なんて歌詞があったけど、それを地でいく形になった自分に笑いが込み上げたものだった 今だけ…、この瞬間だけでいい この唇は俺のものだ すぐに突き離される覚悟はしていた そしたら悪酔いで眠ったふりをして、彼を花嫁の元へ返すんだ そして次に会った時には何も覚えていないふりをしよう これを最後に明彦への想いは封印しよう、と決心していたのに 「っん!!…んぅ」 彼の手が俺の頭と腰を抱え、舌までも絡み付いてきた 逆に自分の啌内を蹂躙し始めて息が上がる 舌と舌が擦れ合い、歯列をなぞられ、上顎を擽られるうちに下腹部に甘い重みを感じて自然と腰が揺れる 一時の気の迷いだとしても嬉しかった 一瞬でも、彼を欲情させる事が出来るなんて思いもよらなかったから 「んふぁっ、あき…ひこ、んぁ」 思わず洩れた息と呟きに、ピタリと総ての動きを止めた彼 ――な、に…? それまでの激しさが嘘のように冷め、ひんやりとした空気が流れているようで ゆっくりと目を開き、彼の唇から視線を瞳へと移して愕然とした 「ぇ…?」 ――明彦、じゃない… だって、冷たい眼をして俺を見下ろすその人は、仁さんだったから…  
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