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          全身の血の気が引いてくる ――何やってんだ俺は 一気に酔いが引いた気がする 明彦の兄にキスしてしまった、しかも明彦の名前まで呼んで… パニックになりかけ、未だに自分を抱きしめている身体を引き離そうと思い切り腕を突っ張るのに、仁さんが離れる事はなく逆に腰を抱く手に力を込めてくる 「ちょっ…、離してくださいよ!!」 アルコールと、動揺で震える身体ではうまく力が入らなくて懇願するように仁さんを覗き込めば、表情のない顔と、瞳の奥に宿る蔑むような怒りのような視線 いたたまれず、自然と俯いてしまう 「明彦が結婚しちゃって、そんなに寂しいんだ 和也くん、昔から明彦の事好きだったもんなぁ」 大好きで堪らないって顔していつも見てたのに何で明彦は気づかねぇんだろうね?って、耳に息を吹きかけるように囁かれてビクリと身体が反応する 何を言ってるんだと睨むように顔を見れば、先ほどと変わらない眼で、でもニヤリと片頬を上げて俺を見下ろしていた 「ごめんな、明彦じゃなくて でもほら、あいつら明日から新婚旅行だから、今頃は空港近くのホテルに行ってんだよねぇ だからあいつ、今お前の世話してる場合じゃねぇの」 だからアパートの場所聞いて、替わりに送ってやったんだけど…残念だったねぇ。 なんて、馬鹿にしたような口振り そうだった、あいつは明日からしばらく日本に居ない だからこんな所に居るはずはないのに… チクリと走る痛みに耐えていると 「…そんなにあいつが好きなんだ」 グイッと顎を掴んで自分と目を合わせるように固定された ――どうしよう、この人は俺の明彦への想いに気づいている 最悪な事態に目眩がした そして、青ざめた俺に向かって言い放った仁さんの言葉に耳を疑う 「俺が慰めてやろうか?」 こんなキスを自分から仕掛けてしまったくらいだから、それがどういう意味かわからないほどバカじゃない あり得ない、明彦の兄貴と…なんて だから 「何を、馬鹿な事を…」 と、苛立ちを込めた視線を仁さんに投げるけど、射竦めるような彼の視線にゾクリと背筋が粟立った  
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