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色気を含んだ吐息のような声に身体が熱くなる
少し大人でどこか危険な雰囲気と、何より明彦を彷彿とさせる面差し
いつもなら、こんな美味しい相手を逃す事はない
でも…
確かに二次会の会場で飲んでいる時は“今夜の相手”をどこかで引っかけてこようとは思っていたけれど、目の前の男は明彦の兄だ
いつも寝ている相手たちとは訳が違う
仁さんと何かあって、もしそれが明彦に知られでもしたら…?
明彦に軽蔑されでもしたら、きっと俺は…
考えただけで泣きそうになる
さっき、バレた方が楽になれるかも…、なんて少しでも考えた自分が馬鹿だ
本当にそんな事になって、軽蔑なんてされたら、俺はきっと死ぬほど後悔するに決まってる
それに、“これに触れてはいけない”と本能が言っていた
触れたら、取り返しがつかない事になりそうな予感をひしひしと感じる
「ほんと、もう冗談はやめてください
仁さんも酔ってるんでしょ?もう帰って休んだ方が…」
きっとふざけているんだと自分に言い聞かせ、目の前の誘惑をはね除けようと必死に腕から逃れようとするのに
「冗談じゃねぇし」
「っ!!」
そう言って、玄関先に俺の身体を突き飛ばすように押し倒した
「痛っ…、何すんだよっ!!」
冷たくて硬いフローリングに諸にぶつかった痛みで、ついつい乱暴な口調になる
「え?何って、傷心の和也くんを慰めてあげようとしてんだけど?」
両方の手首をギリッと床に押し付け、抵抗出来ないように腿に跨がり体重をかけながら愉しそうに俺を見下ろす仁さんの瞳に、雄の本気を見つけて身体が竦んだ
その隙をついて仁さんが動き始め、着ているシャツを両手で掴んだと思ったら、それを引き裂くように左右へ引っ張る
ブチブチッと音を立てて弾け飛んだボタンが廊下中に散らばった
「なっ…!?」
「ふはっ、相変わらずキレイな肌だな」
美味しそう…って呟いてる仁さんの顔が更に艶っぽく変化し、ペロリと舌なめずりをする表情に
自分の理性が溶け出す音と、絶望がゆっくりと迫ってくる音が聞こえたような気がした
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