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ぼんやりとその会話を思い出していると、ふと視界に入り込んでくる物体
まぁ明彦だって事はわかってるけど、にしても距離感がおかしい
相当酔っているのか、目の焦点も合ってないようだ
ここまで飲み過ぎることはほとんどないから、気分でも悪くなったのかもしれない
「なんだよ、気持ち悪くなっちゃった?」
心配になって訊いてみるけど、それに答えずに更に距離を縮めてきて
―――はっ?
次の瞬間、何故か抱きしめられていた
確かに俺たちは仲がいいけど
冗談で後ろから飛び付いてびっくりさせるような事もよくあるけど
正面からしっかりと腕に抱き込まれる事なんて初めてで…
混乱で一気に身体が熱くなるのを感じた
「ちょっ…、何すんだよ!!!」
思い切り引き剥がそうと渾身の力を籠めても、俺より体格のいい明彦に敵わない
それでもしばらく腕の中でもがいていると
「ごめん、もうちょっとだけこのままでいさせて…?」
湿った声を聞いて、泣いているんだと気づいた
仕方なく背中に腕を回し、あやすようにそこを擦ってやると、耐えきれなくなったように嗚咽を洩らす
―――なんでだろう?変に胸が痛むんだけど…
こんなに泣いている姿を初めて見て、急に悲しいような切ないような痛みが胸を貫いた
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