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お前、なんでそんなに泣いてんの?
今までだってこんな事いくらでもあったじゃん
その度にいつも飲んで騒いで遊んで忘れてきたじゃん
なんで今度はそんなに悲しそうに泣くんだよ
って…、わかってる
こいつが今の彼女を大切にしてたこと
今までにないくらい本気だったこと
なのに…俺は彼女と別れたと訊いた時、いつものように心のどこかで喜んだんだ
明彦が本気だと知っていたのに
…いや、知っていたから?
喜んだ事だったはずなのに…どうしてこんなに胸が痛いんだろう
そもそも、どうして喜んでしまうんだろう
自分の感情がわからないまま背中に回した腕を緩めて顔を覗くと、頬に幾筋も涙の痕
なんか堪らない気分になって指でそれを拭い、もう泣いてほしくないって思ったら
唇にキスをしていた
……………
ちょっと待て、俺は今何をした?
自分の行動にびっくりしたと同時、パッと明彦を見てみるとキョトンとした表情で俺を見ている
「やっ、違っ…これはっ」
動揺しまくりの慌てまくりで言い訳を考えるけど何も浮かばない
どうしようって青ざめていたら
そのうちに明彦の身体の全体重が俺にかかって、覗いてみるとなんだか穏やかな、少し微笑むような顔で眠っていた
無防備な軟らかい表情に、自分の気持ちが温かくて…優しくなるのがわかる
重みに耐えられなくなってきて、明彦の身体と一緒にそのまま後ろへと倒れこんだ
間近で見る明彦の寝顔
それに満たされていく自分の心…
その時に気付いたんだ
俺は、明彦の事が好きだったんだって…――
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