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          結局あのキスは彼の中ではなかった事になっていた 何故なら、翌日目覚めた明彦は酔っぱらって覚えていなかったから 正直それはホッとしてたんだ でも…、そのせいで俺は自覚してしまった 明彦を、愛していたんだって事を それからの俺は、ひどく不安定なものになっていた 明彦の前では感情を押し殺していつも通りの自分でいるようにしていたけど いない時間は一人で飲みに行き記憶がなくなるほどに飲んだくれ、時には見ず知らずの人間(男女問わず)とホテルに行ったりして… 最初にそんな事になった相手は“男”だった 自分の気持ちに気づいてから一ヶ月も経たない頃 いつものバーでいつものように酔いつぶれかけていた時に声をかけられた その時の事はあまりよく覚えていないけど、何故かその男に心を開いたようだった ぼんやりした頭で、少し明彦に似ているな、と思ったからそうなったような気がする 男と寝るのは初めてだったけど相手は慣れていたみたいで、ひどく喘がされ明彦を思い出す余裕もなく 気を失うように意識が途切れて、目が覚めた時には男の姿はなかった それが癖になったのか、それからもたまにいろんな男と寝てたりする 最初の時のような愉悦を味わわせてはくれないが その間だけは痛みが忘れられるから… と言うより、そんな行為の痛みで本来の痛みを麻痺させているのかもしれない こんな事、明彦には知られる訳にはいかない 絶対に知られたく、ない…    
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