【非日常へたれ古事記】正月特別企画

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【非日常へたれ古事記】正月特別企画

   1  新たな年の瀬を迎えた香乃斗は、再び神々の住む世界【高天原】へと足を踏み入れていた。  いつも唐突に訪れるそれに当然、いつ、どうやって、などの記憶はなく、気が付いたらいたと、そう表現する他ない現象を、既に何度目かと慣れてしまった彼は『またか』と思う前に、この地に住まう馴染みの顔ぶれに新年の挨拶をしようと、かなり順応した反応を見せていた。 「えーと、猫神様は……あ!」  木々で造られた――香乃斗から見れば、歴史の教科書でしか見たことのない昔風の建造物がいつくも視界の先へと並んでいる。  そこから少し離れた木々が茂る森の手前、見晴らしのよいなだらかな丘の上に見慣れた、ちょこんとした丸い姿が。 「猫神様だ!」  ダッ、と勢いを付けて香乃斗は駆けだした。  間違いない。  あのフォルム、あの色、新年早々初詣に行く人々は多くいるが、本物の神様に会える人間はそういないだろうと香乃斗は大きな声で叫んだ。 「猫神様ー!! ……明けまして、おめでとうございまーす! 今年も宜しくー!」 「んあ?……いたのか、香乃斗」  ピクリ、と耳が僅かに動き、ゆっくりとその場で身体を回したのは――高天原を治める頂点に立つ天照大猫神だ。寝起きらしく不機嫌そうな声で言い、薄い目を開けたまま身体を起こそうともしない。 「はいっ!明けましておめでとうございます!でもってお年だ……じゃなくて! 新年のご挨拶に参りました!」 (……あっぶねー! 正直にお年玉くださいなんていったら、絶対に猫神様『たかるなー!』って怒るよね?)  と、香乃斗は慌てて言い換える。  訪れる前にブレインやエルシー達に日本の習慣に沿って【お年玉】を貰ったばかりなので、ついその流れでうっかり言葉が出てしまった。  まだ貰える年で赦されるものの、あまり催促するものではないが、幸い、天照大猫神は寝ぼけていて気付いていないようだ。  ふわあ……と、大きく欠伸をして、 「……勝手にしれ」  そう言うと蹲り、また団子のように丸まり眠ってしまう。  余程眠いのだろう。執りつくシマもない様子に、香乃斗は首を傾げてしまう。
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