【非日常へたれ古事記】正月特別企画

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「え? もしかして、眠いの? どうしよう……でも、折角会えたのにー……猫神様ー、もっと、お話、しましょうよー……」  折角会えたのにー、年が明けてお正月なのにー、俺、今日本にいないから日本の正月らしいことしたいですー……と、軽く駄々を捏ねながら天照大猫神の丸まった身体を軽く揺する香乃斗。  しかし、天照大猫神に触れながら、その柔らかい毛触りを楽しんでいたせいか、思ったよりもいつの間にか強く揺すり、とうとう天照大猫神の堪忍袋の緒が切れかけた。 「……お前なにしにきたにゃっ!? いい加減にしれっ!」  我慢の限界に達した天照大猫神は思い切り爪を向く。  理由なら先程話したはずだが、と、そんな突っ込みを入れる間もなく、香乃斗は手の甲に鋭い爪跡を付けられた。 「いってええええっ!!!」  深くはないが、浅くもない――傷を受けたそれを抑えて、はっと気付く。 (――こんな展開、前にもあったよね!? っていうか、この流れは非常に拙い気が……!)  以前、こうやって天照大猫神の不興を買って世界を闇へと陥れてしまった経験がある香乃斗は顔を青ざめた。  正月早々、厄介なことになるのはごめんだ。 「ご、ごめんなさい! 出直しますから岩戸に籠るのは止めてくださいねー!」  と、急いで香乃斗は手を離し、謝罪もそこそこに、今年の干支である脱兎の如く逃げ足で、勢いよくその場から去って行った。  残されたのは、軽く毛を乱されたまま、ぽかんと眠気の取れない薄眼を開けたままの天照大猫神だ。 「……なんなんにゃ?あいつは」  勝手にやってきて勝手に去っていった香乃斗に訝しげな顔をするが、それよりも眠気の方が勝ったのだろう。  すぐに目を閉じ寝息を立て始めた。
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