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「へえ……って、行方不明ってスサのことですか? 猫神様ならあっちで寝てましたけど。俺でよかったら何か手伝いますよ?」
(――猫神様、ここでは一番偉いのに寝ててもいいのかな?)
と、思いつつ忙しそうな月読を見て、香乃斗も思わず手を貸せないかと申し出た。
彼には天照大猫神とは別に色々と世話になったこともある。どうせ来たからには直ぐに戻ることはできないのだし、と、時間を潰す意味合いも兼ねて。
「いなくなったのは年神ですよ」
と、月読は告げて、深いため息をついた。
「この忙しい年の瀬や年明けに、姉上にへたに出歩かれて勝手に怒って岩戸にこもられても迷惑ですし、スサはいたっていたずらしかしないですからね。いない方がいいんです」
余裕がないためか辛らつな言葉を並べながら月読は続けた。
確かに言われてみればその通りかもしれない、と、あの二匹には失礼だが、香乃斗もこっそり月読に同意した。
「でも年神は困るんですよ。本当に困るんです」
二度も強調する辺り、本当に困っているのだろう。
眉間の皺が、さらに増えたのを香乃斗は見逃さなかった。
そして、うっすらと――さらに、苛立ちに近いオーラが浮かんでいることも。
「……えーと、じゃあ、俺でよければ年神探しますよ。どんな神様なんですか?」
月読のそれに、香乃斗はどうして困るのか具体的な理由を聞こうとしたが、とりあえずはそれは後に回した方が良さそうだと止めた。
とても、今の月読を見ていると聞くに聞けない。
だが、捜すとなればその容姿や性別は知っておかなくてはならないと、そんな意味合いで口にした言葉だったのだが、思わぬ方向へと転がった。
月読の機嫌がさらに、そして劇的に悪化したのだ。
「あなた、年神がどんなものかも知らないんですか!? それでも日本人ですか!?」
「!?」
月読は最初驚いたように目を見開いたかと思うと、明らかにいらいらした口調で言った。
(――あれ?俺、もしかして地雷、踏んだ?)
ぽかんと首を傾げる香乃斗を余所に、月読は一気に息継ぎもなく畳みかける。
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