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「なぜです?なぜ、金龍姫を追わないのですか?」
緊迫した空気が流れる城塞の最深部の広間に、片膝をつく赤髪の兵士の声が響く。
対する、玉座に腰を降ろしている黒髪の男は一切表情を変えず、殺伐とした視線を向けていた。
「前にも言ったはずだぞ?マティル。レイチェルを追って何の得がある?労力の無駄使いだ」
「何を考えているのかわからない輩を放っておくのは危険ではないのですか?特に、金龍姫という名は国構わず兵の間では有名です。良からぬことを起こそうと思えば……」
「ふん。今やこのラーディスは5大国最強と言われている。1人の人間が決起したところで結果は同じだ」
「しかし………」
「マティル、貴様はこの私に指図する気か?」
「………………」
玉座に座るリグレスの殺気だった気配に、言葉を失うマティル。
その玉座の隣では、不気味に微笑むミーゼルの姿があった。
その時、元帥がいる広間の中に、マティルやミーゼルと同じ格好をした茶髪の兵士が入ってきた。
茶髪の兵士はマティルの左に片膝をつき、一度深々と礼をした。
「シェルフォード親衛隊リオラン、ただいま帰還致しました」
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