記憶

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ライナは数メートル地面を滑り、口から血を吐き出しながら立ち上がった。 一方、セイルは頬に激痛を感じていた。 普通の剣ならばただのかすり傷で済んだのだが、ライナの炎剣では火傷も負ってしまうからである。 切り傷を炎が侵食するかのような感触。放っておけば間違いなく化膿してしまうだろう。 「っとによぉ、甘く見過ぎてたな。本部の隊長クラス並だぜ」 「ぺっ、よく今のを避けれたな」 「だけど、ようやく勝ちは見えた」 「っ!!」 セイルがニヤッと笑い、ライナが危機感にかられた表情を浮かべた。 いつのまにか、ライナの腹から腕、足にかけてガチガチと凍っていくのである。 「さっきお前に打ち込んだのはただの氷じゃない。マイナス200度の冷気を閉じ込めた氷だ。いわゆる絶対零度に近い温度さ」 首から下はあっという間に凍りつき、ライナは体を動かすこともできなくなった。 「絶対零度で凍りついた氷を一気に破裂させるとどうなると思う?」 「…!!」 もちろん、そんな衝撃が加われば、ライナの体は粉々に砕け散ってしまうだろう。 万事休すか。ライナの負け色が濃厚になった。 「オレはお前を殺すことで、今の自分を乗り越えられる。悪いが、終わりだ」 「く…セイ…!!」 ついにライナは全身氷づけにされてしまった。 あとはあの氷を内から砕くだけ。 それをすれば、ライナは今度こそ死ぬ。もう振り返ることはできなくなる。 もう後戻りはできないのだ。セイルは自分の精神を押し殺し、氷を砕く準備に入った。 「ライナ…今までありがとう。お前のことは忘れない。許してくれなんて言わない。オレがあの世に逝った時は、気の済むまでオレを殺してくれ…」 ライナを閉じ込める氷に入る亀裂。 ついに、この男を殺す時が来た。いくらヴァンたちが自分を取り戻すと言っても、この男を殺してしまえば、そんなことは言えなくなるはず。 この男を殺すことで自分も殺してしまえばいい。セイルはただそう思っていた。
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