記憶

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今まで本当に楽しかった。 何度も命の危機にさらされたけれども。馬鹿なことにも付き合わされたけれども。 ヴァンと2人の時よりも、ヴァンやライナを含めた6人でいる時の方が倍楽しかった。 自分の居場所ができた。彼らのおかげで、自分の価値が見出せてきた。 そして何より、ライナと笑いあった日々。彼とは何度も本気でぶつかった。 ヴァンとは話す機会がないことも、彼と何度も話した。 だが、もうヴァンともライナとも、レイチェルともミサともリリアとも、もう一緒には居られない。 「………」 ライナの氷に入る亀裂が、ピタリと止まった。 「できない…。嫌だ。みんなともう二度と笑いあえないなんて。ライナを殺すなんて…できない!!!」 裏切った自分を友達と言ってくれたライナ。初めてだった。自分にそこまで本気でぶつかってくれた人間など。 気づけば、セイルの瞳からは大粒の涙が流れていた。 涙を流すことも、いつ以来だろう。わからない。だって、自分は子どもより過去の記憶がないのだから。 セイルの精神の乱れにより、絶対零度が崩れ始め、氷の亀裂から炎が吹き出した。
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