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「うわあああっ!!!」
セイルは爆発に巻き込まれ、炎は上空高く舞い上がった。
だんだんと沈んでいく火柱と砂塵。地に仰向けに倒れこんでいるセイルの姿。
2人の決着の一撃は、ライナの火龍に軍配が上がった。
「く…」
敗北と痛みを味わい、顔を歪めるセイルの視界に、ライナの手が映った。
「…」
「これで一勝一敗だな」
「ライナ…」
「勘違いすんなよ。俺はレイチェルたちを傷つけたお前を許したわけじゃない。でも、このままじゃ後味悪すぎるだろ?」
「…」
「こうなったら、俺らのためにとことんつきあってもらうぞ。騎士の人たちにも償いをしろ。そしたら許してやる。…戻ってこいよ、セイル」
ライナはにこっと笑い、挙げかけたセイルの手を握った。
この男というものは、なぜ他人にこうまで優しいのだろう。
自分だって死の間際に何度も追い込まれたのに。ひどい言葉を何度も浴びせられたのに。
彼の優しさは偽善ではなかった。オレはなんて愚かだったんだ。
そう思ったセイルは、感極まって号泣し始めた。
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