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「ナナ…」
呆然とするセイルを他所に、フィレスはまた新しいタバコに火をつけた。
「逃がしたか。まぁ、終わったな。おいライナ、あのガキどもはどうした?」
フィレスが言っているのは、ミサとヴァンのことである。
「わからない」
「そうか。たぶん戦ってるんだろうが…。まぁ、俺様は戻る。あとはお前らで話をつけな」
フィレスはそれだけ言うと、騎士団本部へと戻って行った。
団長の帰る姿が見えた騎士たちは歓声をあげ、ロアギール勝利を喜んだ。
「ん…」
戻る途中、1人の病人とすれちがった。よろよろとしながらも、リーセに付き添われながら歩いている。
「もう熱はいいのか。金龍姫」
フィレスに声をかけられたのは、レイチェルだった。
まだ熱は下がっていないようだが、なぜ彼女は外に出てきたのか。
レイチェルは歩みを止めないまま、小さな声でフィレスに答えた。
「だいぶマシになった…。勝ったんでしょ?」
「ふん、わかるだろ」
フィレスの言葉を聞いたレイチェルは、とりあえず安堵の表情を浮かべた。
前にはライナとセイルも見える。ライナはやってくれたのだ。
「ん…レイチェル!」
ライナはこちらに気づき、駆け寄ってきた。
「熱は大丈夫なのか?」
「うん。前よりはマシになった」
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