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「レイチェル…」
セイルもこちらに気づき、顔をしゅんと伏せた。
どう声をかけたら良いのかわからない。詫びる言葉もないのである。
「ライナ、肩貸して。ありがとう、リーセ。もういいから」
レイチェルはリーセから離れ、ライナの肩を借りて立った。
それは席を外してくれということ。リーセにもそれはわかり、一礼した後に、フィレスの後を戻って行った。
「レイチェル、ライナ、オレは何て謝ったらいいのかわからない。もちろん、リリアにもミサにもヴァンにも。オレ…」
それもそのはず。裏切って危険な目に合わせ、ひどい言葉も浴びせた。
ライナがいなければ、今ごろレイチェルはアメラスニルの捕虜、リリアはユーネスに殺されていただろう。
「そうね。正直、アンタはそれだけのことをした。ライナがナナに殺されかけた時は、アンタを殺してやろうかと思った」
「お…おい、レイチェル」
そんなことを言えばセイルの心がさらに傷ついてしまうではないか。
ライナは少し慌てるが、レイチェルはさらに続ける。
「この貸しは高くつくわよ。こうなったら、アンタに口ごたえする権利なんてないんだからね。ほら、帰るわよ」
セイルにすっと手を差し出すレイチェル。
その言葉を聞いたセイルは、顔をあげ、涙を拭いながらレイチェルの手を握った。
「ありがとう、レイチェル…。まぁ、最初からオレに口ごたえする権利はなかったがな」
「全くだ」
「うるさいわね。さっさと病室に寝かせなさいよ」
セイルの心は再びライナたちのもとに戻り、3人はまた以前のように笑い合うことができた。
この姿こそが自分本来の姿だ。もうライナたちを嫌いになろうと努力する必要もない。
ライナたちと一緒にいることができる。セイルは、心の底からそれを喜んだのであった。
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