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「アスール様、アスール様!どうかされたのですか?大丈夫ですか?」
部下のその言葉で、アスールはようやく彼に気づいたかのように、目線のみこちらを向いた。
「何の用だ…?」
声も全く生きている感じがしない。
以前のアスールに戻ってもらいたい。部下は勇気を出し、一礼してから口を開いた。
「最近、アスール様に元気がないと、部下たちが申しております」
「だから何だ?」
「どうか、以前のように職務を快活にこなし、民たちともコミュニケーションをはかっては…と」
アスールがいきなりバンッとデスクを殴りつけ、部下はビクッと驚いた。
「与えられた職務ならこなしている。何か文句があるのか?」
「い…いえ。ただ、最近は民たちのための活動がおろそかになっているかと」
「民たちに今さら会わす顔がない。俺は非道なことをしたんだ。民を虐殺したんだ。俺は、あのミーゼルと何ら変わりない!!」
「アスール様…」
「俺は…どうすればいいんだ?もう俺1人の力では限界だ!!俺は…俺は…。レイチェルさん、俺はどうすればいいんですか…?」
アスールの嘆きは、誰にも届くことはなく、むなしく響くだけだった。
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