219人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアのノック音が鳴り、フィレスのやる気のない返事でドアが開いた。
入ってきたのは、今話していた残りの隊の人間であった。
「失礼します」
一番隊隊長ハイムである。
ハイムは一礼をし、ディントの隣で立ち止まった。
「任務を遂行し、ただいま隊を率いて帰還しました」
「よーう、若大将の御帰りか。今回は少し時間がかかったんじゃねーのか?」
「すいません。魔物が逃げ回ったもので…。団長、ナナがここに攻め入ってきたという話を聞きましたが?」
「そうさ」
「団長がいたにしても、隊のほとんどがいない状態でよく被害をあれだけにできましたね」
リネーディム襲来事件は、早速ハイムの耳にも入っていた。
ナナの厄介さを知ってるだけに、ハイムはそのことが不思議でならなかった。
「ハイム、ライナくんという青年を知ってるか?」
「ライナ?あの黒髪の、炎の能力者の?」
「そうだ。彼とその仲間の協力のおかげなんだ。お手柄だったよ」
「あいつらはもうここについていたのか。それはよかった。ということは、セイルもいたか?」
心を改めたとはいえ、彼は今回の事件の首謀者的存在。
ライナから予め話を聞いていた上、死者が出なかったのでフィレスの許しはあるものの、それをどう説明すればいいのかディントはわからなかった。
「あの茶髪小僧のことか。あいつはお前が世話してた孤児だった男だそうだな」
「はい。それが何か?」
「どうせ隠しきれんことだ。ディント、一部始終を話してやれや」
「わかりました…」
「一部始終…?」
ディントは、一昨日の騒動を、最初から話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!