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その頃、セイルは騎士団の裏側にある孤児院にいた。
記憶を無くした自分が育てられた場所。今の自分が産まれた場所。
もう少しで、ここを壊すところだった。ライナという友ができていなかったら、自分は一生十字架を背負うところだったかもしれない。
悪魔のささやきで一時我を忘れたとは言え、セイルはそのことを考えるとぞっとした。
「…」
無邪気に遊ぶ子どもたちを眺めながら、セイルは物思いにふける。
孤児院にくる子どもたちは相変わらず減らない。むしろ増えていく一方だ。
言えば、この子どもたちは自分の弟や妹。ヴァンも弟のような存在だ。
過去を取り戻すために、自分がやろうとしたことの代償は計り知れない。
しかし、自分は一体誰なのか。血のつながった家族は生きているのか。
それだけは知りたい。ここからどうしようか。
セイルの悩みは尽きず、ただベンチに座って遠くを見つめるばかりである。
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