ルームメイト

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「な、何?」 ルルは戸惑いながら葵に尋ねる。 「いやぁ、女の子っぽいなぁ……と、思って」 葵の視線はルルの姿、仕草から離れない。 「そ、そうかな?」 「うん。だって、私って行動とか雑だからさー。ルルみたいな女の子っぽいのに憧れるんだよね」 「えっ!?」 思わず驚いた。 そんな言葉を掛けてもらえると思ってなかったからだ。 「はい、紅茶」 「ありがと」 笑顔で葵は紅茶の入れられたカップを受け取り、美味しそうに飲む。 感情表現の豊かな彼女を見て、ルルは呟いた。 「私は如月さんが羨ましい」 「えっ!? 何で? ってか、葵で良いってば余所余所しいよ」 葵がカップを置き、話す。 「私が羨ましいとか、ルル変わってるね」 「だって……」 ルルはカップに手を添え、顔を伏せた。 「だって、私は上手く出来ない……」 「はっ? 上手くって、何が?」 葵は理解出来ないと言わんばかりに身を前に乗り出す。 「私は何時だって怯えてる、怖がってる」 「何に?」 「拒まれることを怯えて私は友達にすら歩み寄れない。嫌われることを怖がって自分に誰も近づけれない」 ルルは語りながら小さく震えていた。 「だから、私も貴女みたいに……」 恐れることなく、人の心に踏み込めたなら 強くなれたなら 自分を変えられたなら 『きっかけ』さえ、あったなら―――― 「そこまで自分の弱さ解ってんなら早いじゃん。変えちゃいなよ」 葵は紅茶を啜り、そう言った。 「簡単に言わないで……」 感情が高ぶり、涙が込み上げてくる。 身体と同じく、声も震えていた。 「難しくしてんのは、ルルでしょ?」 葵がバッサリと言い放つ。 その言葉はルルの反論を簡単に弾き飛ばし、彼女の真理に届いた。 「あのねぇ、ルルから見て私がどんな人間に見えてるか知らないけど……」 葵はカップを置き、大きく息を吸った。 「テストの点数が悪けりゃヘコむし、美味しいもの食べりゃハシャぐ。どんなに辛いことがあっても、友達と話せば忘れちゃうこともある。ちなみに、今日はルルの紅茶が美味いから勝手にハッピーよ!!」 葵がマシンガンの様に喋る。 その言葉は余りに単純だが、余りに解りやすく、余りに正しいことだった。 「ほら、単純でしょ? ……私って」 葵はそう恥ずかしそうに言った。
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