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葵が出て行ってから数時間、ルルの荷物整理は一息着いていた。
服や諸々の片付けは済んだが、本の置き場だけは未だに未解決のままだ。
とりあえずの現実逃避と休憩を含め、リビングで自前のポットで紅茶を入れた。
部屋には紅茶の香りが舞い、ルルを安息の気分へと誘う。
静かな空間と時間を楽しんでいると、ドアの鍵を慌ただしく開けようとする音が聞こえた。
「あっ……」
ルルが反応し、立ち上がった。
「たっだいまー!!」
静かな空間に、まるで陽気な音楽を奏でる楽団が突入してきたかのように明るい声が響いた。
「お、おかえり」
「ルル、ただいまー。んっ!? 何飲んでるの?」
「えっと、紅茶を……」
「良いな、私も飲みたい!!」
まるで先生に問題に答える生徒のように威勢良く葵が手を上げる。
「じゃあ、準備するね」
ルルが笑顔で答え、紅茶の準備を行う。
「ありがとー」
葵はルルの向かいの席に座った。
ルルが多少緊張しながら紅茶の準備を行う。
しかし、思っていた以上に自然に葵と話せてる自分に驚いた。
葵が作り出す明るい雰囲気だろうか?
まるで、彼女に引き寄せられるかのように自分まで楽しい気分になる
(私も彼女みたい明るくなれたらなぁ。学園生活に不安も無く過ごせるのに……)
そんなことを考えながら、紅茶の準備を続ける。
すると、葵が興味深そうに見ていることに気が付いた。
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