Rain

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小さな紙が散らばった机の上で、リィはユキに話しました。 「まずユキは、雨が降る仕組みを知ってる?」 ユキは少し考えて、 「神様の涙が雨になるのかな…?」 と答えました。 リィはふっと笑い、 「なかなかロマンチックな解答だけど不正解よ。雨はね、水蒸気が上昇気流で空まで昇って、それが雲の中で冷やされて大きくなって落ちてきたものなの」 と言いました。 しかしその話を聞いても、ユキにはよく理解できず、頭の上に?が浮かんでいました。 「まぁ、少し難しかったかしら。とにかく、この辺りに雨が降らない原因は上空の風が強く、暖かいことね。だから雲もすぐ飛んでいっちゃうし水蒸気も固まらない」 「う~ん…。つまり、少し変わった風が吹いてるからって雨が降らないってこと…?」 「そう、その通りよ。近くの山が原因かしらね。そこで、アタシの風と火の魔法の出番ってわけ。計算では明後日に大きな積乱雲がこの村の上空にくるわ。その時にアタシが火の魔法で上昇気流をつくり、風の魔法で雲を固定して冷やす。で、雨が降るってわけ。はぁ~…積乱雲の軌道を算出するのにかなり時間くっちゃったけど、間に合ってよかったわ…」 リィは自分の肩をポンポンと叩きました。 ユキは腕を組みながら難しい顔をしています。 「もう~わからないものは考えても仕方ないわよ。さ、難しい話は終わりにしてもう寝ましょ~アタシもうクタクタよぉ~」 「いや、違うんだ、リィ。雨を降らせることが本当に村人さんたちの幸せに繋がるのかなと思って…」 「そんなの決まってるじゃない。便利になることは幸せよ。さ~もう寝るから~リィちゃんはもう寝るから~ッ!ヨッ!」 と言いながらリィは再び枕にダイブしました。 「とりあえず、明日村長さんにこのことを話してみるわ。きっとみんな大喜びするに違いないんだから!!ほら!ユキ、もう寝るわよ!ランプ消してよねッ!」 リィは小さな掛け布団にスルスルとくるまりました。 ユキは、少しの不安を覚えながら、ランプの明かりを消しました。 「おやすみなさい、リィ。また明日ね」 「おやすみ~ユキ。また明日ぁ~…」 部屋は静かになりました。 便利になることが幸せ…か…。 ユキは昔のことを思い出して、少し悲しくなりました。
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