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次の日。
リィとユキは広場の真ん中に立っていました。
リィの計算通り、その日は大きな雲が村の上に浮かんでいました。しかし雲の流れるスピードが速く、今にも村の上空を通過してしまいそうでした。
「さ、今から始めますから皆さんは離れていてください」
村人達を離れさせてから、リィは、目を閉じて呪文を永唱しはじめました。魔法は、呪文を永唱することでその力を増幅させることが出来るのです。
…………。
村人達は息を飲み、リィの永唱する声以外誰も言葉を発しませんでした。
パッと目を開けて、リィは左腕を空に向けて凪ぎました。
すると流れていた雲がぴたりと村の上空で止まりました。
すかさずリィは右手の掌を雲に向けました。
ゴオォォォォォォォォッ!!
リィの小さな右手から、凄い勢いで熱気が放たれました。
……。
特に変化はありませんでした。
リィは魔法を使い終え、ユキの手を借りてユキの肩に昇りました。
「さ、これで大丈夫です。皆さん、傘の準備はよろしいですか?」
リィは村人達に微笑みかけました。
村人達は皆、拍子抜けしていました。
「傘の準備ったって…雨なんか降って…」
ポツ…。
ポツポツ……。
サァァァァァッ!!!!
夕立のような強い雨がいきなり降り始めました。
村人達は雨に打たれながら空を仰ぎ、呆然としていました。
「さぁ村人さん達。皆で雨宿りしましょう。」
村人達は雨音にも負けないほどの大きな歓声を上げました。
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