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雨が降っていました。
村人達は皆広場に集まっていました。リィ達もいました。
幸い、ユキとリィの救助によって死人は一人も出ませんでしたが、みんな多かれ少なかれの怪我をしていました。
村人達は呆然と空を見上げていました。
顔を伝って、まるで涙を流すように、雨は地面に落ちていきました。
家を無くした人達は、地面に臥して泣き叫んでいました。
村長さんも泣いていました。
「雨が降って、地面が沈んだ…雨が降ったから…」
村人の一人が呟きました。着ている服は泥と血でボロボロになっていました。
「多分…その通りです…」
リィがその呟きに答えました。
「崩れた井戸を見て、わかりました…。この村の地下は地下水の掘りすぎでスカスカになっていたんです…。そこへ急に雨が染み込んで…地盤沈下が起きたんです…」
リィは唇を噛みながら震えていました。
カンッ!
うなだれていたユキの額に、石が飛んできました。
石が飛んできたほうわ見ると、子供が泣きながらユキ達を睨んでいました。
「パパの足を…返せ!!雨を降らせた悪魔め!!」
おそらくサルバさんの息子でしょうか…。
子供はそう叫んで、また石を投げ付けました。
「そうだ…そいつらのせいだ…!!村から出ていけ!!」
「トロルと妖精の旅人なんておかしいと思ってたんだッ!悪魔の使いめッ!!」
村人たちは口々に罵り始めました。
ユキとリィはうなだれて、その場に立ち尽くしていました。
「ごめんなさい…。もうあなたたちをこの村におくことは出来ないわ…。荷物をまとめて、出ていって頂戴…!」
村長さんは目を血走らせながら二人に言いました。
「わかりました…。皆さん、本当にごめんなさい…」
二人は荷物持って村から去りました。
しとしとと、村には雨が降っていました。
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