1人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
サァァァァァァ…。
静かな雨の降る森の中を、二人は歩いていました。
あの村から、二日ほど歩いたところでした。
ユキの肩の上で、リィはまだうなだれていました。
そんなリィが濡れないように、ユキはリィの頭の上に手をかざしていました。
「嫌な雨だね…」
ユキは呟きました。
「アタシは、村の人が幸せになればと思って…雨を降らせたのに…。あんなことになっちゃって…アタシはバカね…」
リィは悲しく笑いながらつぶやきました。
そんなリィに、ユキは微笑みかけました。
「本当は村人さんたちも、リィが皆のためを思ってやったことをわかっているさ。あんなことになったから、僕らを責めるほかなかったんだ」
「うん…でも、村がああなったのはアタシの責任だし…もっと調査してからでも遅くはなかった…」
リィは静かに涙を流しました。
ユキは、大きな掌でリィを包み込みました。
「あまり濡れると風邪をひくよ。リィ…」
リィを包み込んだを手を、ユキは自分の顔の前にやりました。
ユキはリィに微笑みながら、
「ねぇ、リィ…。僕はあの村の事を忘れずに生きていくよ。雨が降った時のとても嬉しそうな笑顔も、僕らに石を投げつけた子供の涙でグショグショになった顔も…全部忘れずに生きていくよ」
と言いました。
リィはコクリと頷きました。
「アタシも、ゼッタイ忘れないよ…」
雨が降っていました。濡れて緩くなった地面を、二人は歩いています。
サァァァァァァ…。
冷たい雨の中、リィは暖かいユキの掌の中で、泣き疲れて眠りました。
サァァァァァァ…………。
雨は、しばらく止みそうにありません…。
最初のコメントを投稿しよう!