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そして、
白髪の彼女
「悪くない……どころではない。……最高、だな」
そう言ってうつらうつらと、少しずつ、少しずつ瞼に重さをのせて、静かに瞳を閉じて小さな寝息をたてはじめた。
赤い彼
「……」
それが嬉しくて嬉しくて嬉しくて、赤い彼は眠る彼女を優しく見る。
……だけど、まるでもう一人、もう一つ心があるような感覚を覚えた。
――誰だ?
と、怒り狂いそうになる自分がいた。
先程の白髪の彼女の姿を、震える体を、無理に笑う笑顔を思い出して、沸き上がったのは怒りの感情。
――誰だ?
誰だ?
誰だ?誰だ?誰だ?
彼女を傷つけたのは。
あんな顔をさせたのは。
痛みを与えたのは。
―――誰だ?
眠る彼女の寝顔を見ながら安心するのと同時に、その怒りに心が圧されるのとで、赤い彼は酷く気分が悪くなった。
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