16人が本棚に入れています
本棚に追加
悪くなった気分を抑えるように赤い彼は自身の口元に手を当てる。
こんな感情、彼女には知られたくない。
彼女が居ると嬉しいのに怒りが沸き上がって、彼女を苦しめる者を消したくなる。
そんな、己の中の心の動き。
嫌だ。
彼女には知られたくない。
自分でさえ『嫌だ』と思う、こんな感情。
赤い彼
(……朝、が)
来る前に。
彼女が起きる前に、どうか。
どうか、抑えないと。
そうやって、赤い彼は、己と足掻く。
白髪の彼女
「……我のせいで眠れなかったのではないか?そなた」
そして明けた、朝。
白髪の彼女は気遣わしげに赤い彼を見上げてそう訊ねた。
最初のコメントを投稿しよう!