過程の欠片

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悪くなった気分を抑えるように赤い彼は自身の口元に手を当てる。 こんな感情、彼女には知られたくない。 彼女が居ると嬉しいのに怒りが沸き上がって、彼女を苦しめる者を消したくなる。 そんな、己の中の心の動き。 嫌だ。 彼女には知られたくない。 自分でさえ『嫌だ』と思う、こんな感情。 赤い彼 (……朝、が) 来る前に。 彼女が起きる前に、どうか。 どうか、抑えないと。 そうやって、赤い彼は、己と足掻く。 白髪の彼女 「……我のせいで眠れなかったのではないか?そなた」 そして明けた、朝。 白髪の彼女は気遣わしげに赤い彼を見上げてそう訊ねた。
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