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「そ、そうですよね。初日からお金のやり繰りを心配するなんてさっすが椿ちゃんですよ、あはは、はは……」
「ま、平民はこうしていかなきゃ暮らしていけないのさ。って言っても、あんたは例外だけどね。貴族のくせに貧乏とか、聞いた事無いよ」
そう言って楽しそうに笑い、笑い過ぎてむせる椿ちゃん。
言い忘れてましたが、実は私は貴族なんです。
マポロンの村を治める領主なのですが、なんせ領土が人口1700人程度しかいない町。
当然収入も大してないので、椿ちゃんの家の隣にごくごく普通の家が建っていますし、着飾る余裕もない事が逆に親しみやすく思われたのか、ご近所付き合いは非常に良好です。
朝峰家は元々平民家で、戦争で活躍して領土を与えられた成り上がり貴族ですから、父も母もこの生活をまるで苦にしていません。
「む、そこまで笑いますか。椿ちゃんひどいですよ。いくら貧乏って言ったって、超欲張りセットを頼むくらいの余裕はあるんですからね!!」
「超欲張りセット? なんか分かんないけど、分かったから早く席見つけて食べようよ」
そう言うと椿ちゃんはまだニヤニヤしながらカウンターに行って食券を渡してしまいました。
私も急いでそれに続くと、その食券を受け取ったおばちゃんは慣れた手つきでそれを受け取ったかと思えば、急にしゃがみ込んで、3秒後に立ちあがった時には親子丼の乗ったトレイを1つずつ持っていました。
「あいよっ、親子丼2つね!!」
「はやすぎです!!」
「はやっ?!!」
あまりの早さに思わず2人で突っ込んでしましました!!
このカウンターの下に一体何があるというのでしょうか。
まさか3秒で親子丼を作る機械が……。
「ありがとー。ほら何ぼーっとしてんの、置いてくよ?」
「わっ、待って下さいよ!!」
全自動親子丼生成機、もしあるならばマポロンの村に持っていってみんなで親子丼パーティーがしたいですね。
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