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カウンターからずいぶん離れた、窓際に近いところにテーブル席を見つけたので、私たちはすかさずそこに滑り込みました。
「よし、んじゃ食うぞー!!」
「いただきます!!」
おぉ、この親子丼想像以上に美味しいですよ。
フワフワしていて、ご飯が欲しくなるくらいの濃いめの味付けで、なんというか、『THE・DONBURI』って感じがします。
こんなところでドンブリの完成形に出会うとは思いませんでしたよ。
「うん、やっぱり親子丼はどの店でも美味いねー!!」
「どの店でもって、椿ちゃんマポロンの飯吉食堂(めしきち食堂)以外で食べた事あるんですか?」
「いやないけど?」
「……ですよね」
一瞬ビックリしました。
まさか私に内緒で村の外で食べていたのかと思いましたよ。
所詮、マポロンの民には飯吉食堂の微妙に温い料理がお似合いなんです。
「あれぇ? 君達ってたしか同じ6組の子だよねー?」
その時、妙に間延びしたやる気の無い声がテーブルの隣から聞こえてきました。
親子丼から目線を上げてみると、そこにいたのは一人の女子生徒。
「そ、そうですけど」
茶髪のショートヘアで、左側だけを赤のヘアゴムで結わっていて、赤ぶちの眼鏡から見える目はさきほどの間延びした言葉を表しているかのように垂れています。
「あはー、やっぱりねぇ。そうだと思ったんだー。おーい、ここの席空いてるよ―」
彼女は嬉しそうに笑うなり、ゆったりと振り返って、混雑しているカウンターの方に向かってのろのろと手を振り始めました。
一体何なんでしょう。
というか、彼女を見ているとやる気を奪われると言いますか、眠くなってきますね。
そう思ったのも束の間、
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