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伸一は、何が起こったのか、分からなかった。
ただ、心臓だけは、ドクドクと、激しく動揺していた。
目の前の麻美から、先ほどの笑顔は消え失せていた。
『…よくも…よくも騙したわね!』
代わりに、麻美の目からはボロボロと涙が溢れ落ち、目には怒りと悲しみを宿していた。
その目で、伸一を真っ直ぐ見つめ、
『…ひどい…この裏切り者!あんたは、…人殺しよ!人殺し!
あんたは…わたしを殺した!もう心は死んだ!』
麻美は、目を反らさず、くしゃくしゃにした顔を伸一に向けたまま、叫んだ。
夜の清掃のおばちゃんが近くにいたが、そんな事はどうでもよかった。
フロアから様子を見守る従業員の目も、無視して麻美は続ける。
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