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「……」
簡素な椅子に腰掛けて、青年は目を閉じていた。
椅子の横には丸いテーブルがあり、その上には、バラバラに切り刻まれた紙が散らばっていた。
「……ない」
青年がゆっくりと口を開き、言葉を発した。
「許さない……許さない……許さない」
憎しみを吐くかのように、恨みを込めるように、青年は同じ言葉を口にする。
やがて、暗い部屋に足音が響いてきた。
「坊ちゃん、言われた通りに仕掛けを施してまいりました」
「……そうか」
足音のした方から声が届き、青年は返事を返した。
そして、ゆっくりと立ち上がり、
「……」
テーブルの上に散らばっている紙を見下ろした。
「……」
ひどく冷たい、冷徹な瞳で、青年は見下ろした。
「……フッ」
やがて、青年は懐からマッチを取り出し、火をつけ、
「やはり……気に入らない」
火のついたマッチをテーブルの上に捨てた。
火はテーブルの上の紙に引火し、赤々と燃えだした。
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