第一部・悠子と巧

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デイケア・ハウス「囲炉裏」は都心のベッドタウンのこの街の郊外にある、コンクリート造り二階建ての敷地を広くとった建物で、六十歳以上の老人が小遣い銭程度で遊べる老人専用の通所施設である。この街の資産家である山本淳蔵が利潤のためというよりも福祉活動の一環として運営していた。施設内には入浴設備の他に多目的室が幾つかあって、なかでも「囲炉裏」という名称のとおりに囲炉裏を切った三十畳の部屋は老人たちの社交の場として人気があった。そして趣味の講座として、囲碁、将棋、華道、茶道、書道、社交ダンス、ビリヤード、カラオケ、陶芸、ギター部が開催されており、定員の許す範囲において老人たちはその講座に在籍することができるのであった。
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