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休憩の時間があって、若手ギタリストの鈴木や大萩たちは席を立った。楽屋にでも挨拶に行くつもりであったのだろうか。悠子も席を立ってホワイエに出た。ホワイエでは荘村のCDが販売されていて、終演後にサイン会があるという。悠子はCDの内容を見たがこれと言って欲しい物がなかったので、コーヒーを飲んで席に戻った。谷川俊太郎の姿は席には見られなかった。おそらく自分の作品を確認して帰ったのであろうと思われた。「森の中で」の難解な表現が悠子を心なしか沈んだ気持ちにさせていた。第二部は南米系の曲が集まっていた。最初にラテン・アメリカ最大の作曲家と呼ばれるエイトル・ヴィラ=ロボスの曲で、プレリュード「第一番ホ短調」、「第二番ホ長調」、「第五番ニ長調」の三曲でそれぞれに「抒情のメロディー」「カパドシオ(リオの下町の伊達男たちの俗称)の歌」「社交界への讃歌」というニックネームがつけられている。ヴィラ=ロボスは五篇あるプレリュードを一九四0年の円熟期に、当時二度目の結婚をしたばかりだったアルミンダ夫人(愛称ミンジーニャ)に贈ったものだった。いずれの曲もギターという楽器を愛しその性能を熟知した作曲家ならではの珠玉の作品を、荘村は円熟のテクニックで弾ききった。
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